住民税も所得税と同じく、給与を支払っている会社はすべて、本人の給与から天引きして市町村に納めなくてはならない決まりになっています。
会社は毎年1月末までに、その従業員について支払った前年の給与総額を記載した「給与支払報告書」を、本人の住む市町村に送ることになっています。
そうすると市町村のほうではその人の住民税を計算して、支払額を記した「給与所得等に係る市民税・県民税の特別徴収税額通知書」を、会社に送ってきます。
それにもとづき会社は6月から翌年の5月まで、毎月ほぼ均等額となる住民税を、本人の給与から天引きしてその市町村に納めているわけです。
これが「特別徴収」と呼ばれるシステムです。
住民税は「その年に課税される」所得税と異なり、「前年の所得に対して」課税されます。
つまり払う側からしてみると、住民税は「一年遅れの後払い」なわけです。
この春から勤め始めた新入社員の方は、今年こそ給与明細の住民税の欄は空欄ですが、来年の6月からは天引きがはじまって手取りが減りますので、その点は心しておくようにしましょう。
もうひとつ注意しておきたいのは、昨今の景気低迷で会社の業績が悪化し、今年の給料や賞与が、前年に比べて大幅にダウンする見通しの人です。
上で述べたように住民税は「後払い」ですから、住民税の計算のベースとなるのは「前年の」給与収入の総額です。
給与は減るわ、住民税負担は重いわで、泣きたい気持ちになるかもしれません...ただそれでも、今年不幸にして会社が倒産したり、あるいは失業した場合に比べると、収入が続くだけまだマシです。
ご存じのとおり、平成19年度の税制改正で所得税から住民税への税源移譲が行われましたが、これによって実質的な税負担も増したと言われています。
失業保険には所得税こそかからないものの、前年普通に給料をもらっていた場合など、失業の身で支払う住民税の金額は、相当ツライものがあるはずです。
失業保険の受給中、注意したい支出(1)~住民税 (関連サイトより)
住民税については、副業などによる所得がある場合、自治体に申告しなければなりません。
自治体のほうでは、それら副業の所得も合算して会社に特別徴収させるため、たとえば正社員が会社に隠れてアルバイトなどをしている場合は、その段階で会社にバレることになってしまいます。
最近でこそ社員の副業を認める会社も珍しくなくなっていますが、副業禁止規定を置いている会社の場合はやっかいですね。
一般的にはこれを避ける方法として、給与以外の所得については住民税について「普通徴収」を選ぶこと、とされています。
「普通徴収」は「特別徴収」に対比されるもので、要するに自分のところに直接送られてくる納付書を使って、住民税を納めるやり方です。
こうしておくと会社には給与以外の資料が行かないので大丈夫...という理屈なのですが、実は「普通徴収」を選んだとしても、会社にバレる可能性は残ります。
上で述べた市町村から会社に送られてくる「特別徴収税額通知書」には「主たる給与以外の所得区分」という欄があって、副業をやっている場合にはそこにチェックが入っています。
副業禁止規定をおいて目を光らせているような会社の場合、担当者がその点に気づく可能性も低くはないからです。
「普通徴収にしておけば絶対大丈夫」というほど単純な話でもない点には、注意が必要です。
なお 派遣社員・パート・アルバイト、源泉徴収と年末調整での注意点 で、派遣社員・パートアルバイトの給与明細と所得税について記しましたが、住民税については、派遣会社や勤務先が正社員同様に特別徴収している場合もあれば、会社としてはなんらタッチせず普通徴収として納付書を使い自分で納める場合もあります。
給与明細書の住民税の欄をチェックしてみましょう。
後払いとなる住民税の支払のタイミングや資金計画などは、頭でわかっていてもつい間違えがちです。
自分の勤務のケースではどうなのかは、よく注意しておきましょう。